皆さんは打楽器だけのコンサートはどんな事をやるかご存知ですか?そうです、叩けば音が出るあの打楽器だけのコンサートです。動画を見ればわかります。どうぞご覧ください。
去る7月13日に打楽器奏者の新野将之先生をお招きして、本校で音楽を選択している10年生からIBの12年生までを対象とした出張授業と、その後ランチリセスの時間帯に全員対象のミニコンサートを開いていただきました。
ミニコンサートでは、先生方を含め予想以上の数の生徒が大急ぎでランチを食べて駆けつけてくれました。コロナ対策として椅子の間の距離をとっていたので、壁際に立ち見がたくさん出てしまいました。結局椅子の隙間にも生徒が入って、あの広いアライホールがぎゅうぎゅうの満員御礼となりました。ほとんどの人が打楽器だけのコンサートというものは初めてだったと思うので、そのバリエーションとパフォーマンスにビックリしたと思います。スネアドラムの音の多彩さ、マリンバの音のふくよかな響き、打楽器の楽譜って結構いい加減でも再現性があるのか、解釈は人それぞれだから正解はないけど自分の表現を楽しめばいいのか等、学ぶこともたくさんあったのではないでしょうか。打楽器は確かに叩けば音が鳴るので1番簡単な楽器だと思われているが、叩いた音で表現するのは難しい、奥が深い楽器なのだと生徒たちに知ってほしいとウェン先生が仰っていたのを小耳に挟みました。
出張授業での「シンデレラ」という曲では、「何が起こっているかを想像しながら聞いてね」と注意点を提示されてからの演奏でした。しかも楽器はまさかの赤いハイヒール。演奏後、どんな想像をしたのか生徒に聞いたところ、「彼氏と別れてムカムカしていたがそのうちどうでも良くなった」「誰かに追われているので、ビルの鍵のかかったドアを必死で開けたり階段を駆け上ったりとスリル満点の逃走劇」「曲名がシンデレラというからにはシンデレラの話になぞらえて見ていた」等各々想像した事を話してくれました。新野先生は3人の回答にとても驚き満足していました。なぜなら他のところで同じように演奏して同じような問いかけをしても、ほとんどは一言感想しか出てこないがこの学校では、全員豊かな想像力をしっかり言葉で表現してくれた。こんなに演奏していて面白いことはないと、とても喜んでくださいました。この演目では、同じものを見て聞いているのに各個人によって受け取り方も想像する事も全く違うという事を学ばせてくれました。そしてそれがみんな一人一人の考え方である事と同時にそれを披露することによって、自分にはなかった人の考え方や受け取り方を知る事ができるというのが大事だという事を教えてくれました。
それから最後はマルチパーカッションを使った演目です。建築家のクセナキスが作曲して独自の表現を使って世に残したものです。どう考えても人間の2本の腕だけでは表現できないところがあるそうです。それでもなんとかしてこの曲を演奏しようとする打楽器奏者が後を絶たないそうです。現在のコロナ禍で、不自由な思いをたくさんしていると思うが、不自由な中でもどのような工夫をすれば、成し遂げることができるのかを考えて挑戦するのと同じ作業ではないかと新野先生は話していました。
新野先生のアウトリーチは、演奏のパワーと超人的な技術の融合した強烈なインパクトがあり、その演奏や姿勢から与えてくれるメッセージがとてもIBの考え方に似ている気がしました。打楽器に特化したアプローチですが、向かう先、その真理はIBで学習している事と同じことなのではないかしらという印象を受けました。
新野先生は、生涯学習者を体現している世界一の打楽器奏者の一人だと思います。そんな新野先生の演奏から皆さんも何か一つでも心に引っ掛かるものがあれば、今回のイベントは大成功だと思います。実施にあたりましては学校の先生方、SHIP役員の皆様のご理解とご協力の下、実現することができました。面白かったです。ありがとうございました。
SET LIST:
アウトリーチ
リズムの神々へ / N.J.ジヴコヴィッチ
アスヴェンチュラス / A.ゲラシメス
トルコ行進曲 / W.A.モーツァルト
木星より / G.ホルスト
アマゾニア・ドリーミング / A.ロックウッド
シンデレラ / M.ナス
ルボンB / I.クセナキス
コンサート
リズムの神々へ / N.J.ジヴコヴィッチ
水浸しの憂鬱 / 風間真
タップ・オラトリー / C.カンジェロシー
希望のグルーヴ / J.スペンサー
ルボンB / I.クセナキス








